若林めぐみさん

受講生インタビュー

若林めぐみさん

2025年 ピエール・レネール教授 ヴィオラクラス受講生/ディアナ・リゲティ教授 特別演習 「Concerts fleuris – コンセール・フルリ」受講生

パリ・エコール・ノルマル音楽院スカラシップ受賞者

幼少期からバイオリンとともに歩み、音楽の道を志す中でヴィオラへと転向した若林さん。愛知県立芸術大学音楽学部および大学院を修了し、現在はフリーランスとして、東海地方を中心にオーケストラの客演奏者や室内楽奏者として活動中です。初めてのフランス流レッスンに触れ、表現の幅を広げた貴重な体験を、「自分の音楽を深く見つめ直した期間」と振り返ります。そんな若林さんの歩みと想いをお聞きしました。

「呼吸が自然に聞こえるような、伸びやかで豊かな音を目指して」

―まず、音楽を始められたきっかけから教えてください。

4歳ぐらいから、母が使っていたバイオリンで遊んでいました。ピアノを習っていたわけでもなく、楽器の“はじめまして”がバイオリンでした。

―そこからずっとバイオリン一本だったのですか?

はい、大学受験まではずっとバイオリン。でも、音大の入試でヴィオラと併願して受けたら、ヴィオラで合格して(笑)。それが転機でした。

―大学進学を機に生まれ育った長野から愛知へ。生活も楽器も、新天地からのスタートだったのですね。

ヴィオラが自分の性格や身体に合っていたみたいです。音域が低めなのも、自分にはしっくりきました。クラスには穏やかな方が多くて、先生や門下生の雰囲気もとても柔らかい。私にはとても心地よかった。

―6年間じっくり学ばれ、オーケストラをはじめ、さまざまな形で演奏活動を続けておられる中で、アカデミーに参加しようと思われたきっかけは?

フランスに留学している友人がいて、会いに行くなら自分もフランスで短期のレッスンを受けてみたいと思い、ネットで探していたら、このアカデミーが一番上に出てきました。大学院ではドイツの作品を研究していたので、堅めでしっかりとした奏法には慣れていましたが、フランス流のレッスンはほぼ初めて。締め切りギリギリでしたけど「これは参加したい!」と。

―実際にピエール先生の授業を受けて、如何でしたか?

ピエール先生の脱力が効いた、自然に軽く弾く感じがすごく印象的でした。フランス音楽は色彩やグラデーションが繊細で、ドイツ音楽みたいに“始まりと終わりが明確”じゃない。実は、ずっと苦手意識を持っていたんです。大学院ではドイツ語やイタリア語を授業でとっていたのでなんとなくイメージできたのですが、フランス語はまったく分からないので、楽譜を読んでいてもイメージが掴みにくくて――学生時代に泣きながら練習したこともありました。

―そんな苦手意識がある中で、アカデミーに参加されたというのは、大きな転換ですね。

演奏する時にはどうしても「正確に弾かないと」とか「間違えちゃいけない」という考えが先行するせいか、身体が縮こまって息が止まり、そのために“真面目すぎる”とか“音楽が四角い”と言われていて、悩んでいました。ところが、ピエール先生のレッスンで呼吸法を教えていただいて、腹式呼吸のような感覚を意識することで、理想に近づけた瞬間があったんです。これまで具体的に呼吸に向き合ったことがなかったので、大きな発見でしたし、音が明らかに変わりました。他の受講生の聴講を通しても、呼吸が音に影響することが客観的に分かりました。今回のアカデミーをきっかけに、短期間でもいいのでフランスに行き、ピエール先生のレッスンをもっと受けてみたいと思うようになったのですから、大きな転換だと思います。

―レッスン以外にも、アカデミーならではの経験はありましたか?

リゲティ先生(チェロ)と室内楽を演奏するプログラムにも参加しましたが、先生のチェロの音が隣から聞こえるのがもう…幸せでした。室内楽が本当に好きです。卒業してから機会が減っていたので、あの時間はとても貴重でした。

―2回のリハと1回のゲネプロだけでコンサートに挑むという、密度の高い共演プロジェクトでしたね。他の受講生との交流もありましたか?

はい、ヴィオラは参加者が少なかったので皆と話す時間がたくさんありましたし、奏法について語り合うのはすごく楽しかったです。お世話になった通訳の方なども一緒に、先生とランチをしたことも良い思い出です。レッスンは緊張感に溢れていましたが、終わってみると楽しさが上回っていたと思います。

―今このアカデミーのHPをご覧になって、参加を考えている方々にメッセージをお願いします。

私にとっては、純粋に音楽を楽しむために、どうしたらよいかということを探す期間でもあった気がします。レッスンそのものも素晴らしいのですが、他の参加者のレッスンを聴く機会も多くて、刺激的で学びの多い時間でした。私自身、これまで1週間程度の講習会には参加したことがありましたが、2週間にわたってフランス人の先生とじっくり向き合える機会はとても貴重だと感じます。コンサートなどのイベントも多く、プログラム全体がバラエティに富んでいます。1週間では物足りないと感じる方にも、2週間という期間は春休みとも重なり、参加しやすいのではないでしょうか?いきなりフランスに行くのは少しハードルが高いという方にとっても、このアカデミーはその一歩として最適な環境です。会期中はフランス語が飛び交う環境でレッスンが行われますから!今はオンラインで多くの情報が手に入りますが、やはり実際の体験に勝るものはありません。私の周りにも、コロナ禍で留学を諦めた友人が数多くいました…。「思い立ったら吉日」と言いますが、私もホームページを見てすぐ応募しました。参加して損することは絶対にありません。このタイミングを大切にして、ぜひ挑戦してほしいです。