橘和美優さん

受講生インタビュー

橘和美優さん

2025年 レジス・パスキエ教授 ヴァイオリンクラス受講生

パリ・エコール・ノルマル音楽院スカラシップ受賞者

幼少期からヴァイオリンとともに歩み、国内外の舞台で確かな実力を示してきた橘和美優さん。2023年には、世界的なロン=ティボー国際音楽コンクールで第5位に入賞し、若き日本人ソリストとして注目を集めました。表現力をさらに深めるため、今年も京都フランスアカデミーに参加。レジス・パスキエ氏の薫陶を受けた10日間を、「音楽表現の幅を広げた、成長の10日間」と振り返ります。2025年度パリ・エコール・ノルマル音楽院のスカラシップにも選ばれ、夢の舞台は次の章へと続いています。そんな橘和さんに、お話をうかがいました。

「音楽表現の幅を広げた、成長の10日間」

―既に国内外でその実力を発揮しておられます。今回のアカデミーで、「新たに得たもの」について教えていただけますか?

パスキエ先生には、作品の背景や技術的なことをたくさん教えていただきました。秋に控えている演奏会のために、モーツァルトの作品を用意したのですが、オーケストラと共演するソリストとしてのコツ、音の出し方、指揮者への合図、立ち振る舞いに加えて、身体の使い方や、私が「弾きにくいな」と感じていた部分の原因とその解決策も見出していただきました。「練習を重ねれば弾ける」という単純な技術の問題ではなくて、もっと深い部分への考察があり、レッスン中は常に「目からうろこ」状態でした。自分はまだまだだと痛感しました。

―レッスンをすべて終えて、最も印象に残っていることを教えてください。

パスキエ先生の表現力です。作品のイメージを伝えるための身振り手振りや表情――体全体を使って表現する姿に、ヨーロッパならではの文化を感じました。日本人が自然に盆踊りを踊るのと同じ感覚なのかな(笑)? 日本でのレッスンではなかなか味わえないダイナミズムを感じ、イメージが作りやすかったです。

―確かに。レッスンを拝見させていただきましたが、パスキエ先生は椅子から立ち上がったり、腕を大きく動かしたりして、それこそ通訳の方や伴奏の方も一緒に巻き込んで、レッスンを作り上げているような雰囲気を感じました。

そうです! パスキエ先生のレッスンを受けることができたことは、私にとって大きな転換期でした。アカデミーでは、同じ先生に5回、1時間以上もレッスンしていただけます。しかも、毎回素晴らしい伴奏付きで、充実感と学びの深さは計り知れないです。ヨーロッパで活躍している先生方のレッスンを、このような形で日本国内で受ける機会は、なかなかないと思います。聴講制度を利用して他の受講生のレッスンを見ると、「あ、この曲を弾いてみたい」と思うことも多く、もちろん、自分のレッスンも聴講されることがありますが、逆に程よい緊張感を持ちながら演奏できるので、それも良い経験になりました。

―東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学を首席で卒業し、東京音楽大学大学院へ進むなど、着実に演奏家への道を歩んでおられますが、橘和さんはソリストを目指しているとのこと。その理由を教えていただけますか?

室内楽もオーケストラも、何にでも挑戦していきたい気持ちはあります。ただ、コンクールで賞をいただくたびに、「もっと上手くなりたい」という意欲が湧いてくるんです。ソリストを目指しているのは、自分自身の技術力を磨きたいからかもしれません。

―パスキエ先生のレッスンを受けて「自分はまだまだだと感じた」と言っておられたように、目指している演奏家や、演奏における理想的な音色などがあるのでしょうか?

作曲家の個性を尊重しながら、基本には忠実に、それでいて演奏者自身の良さも伝えられる演奏が理想です。パスキエ先生もその点をしっかり見抜いていて、私の個性や表現したいことを尊重しながら、作曲家の意図から逸脱しないように導いてくださいます。個人的には、カナダのバイオリニスト、ジェイムズ・エーネスが大好きです。

―ちょうどこの取材が始まる直前に、2025年度のスカラシップを獲得されたという連絡を受けられました。おめでとうございます。感想を聞かせていただけますか?

まさか自分が受かるとは思っていなかったので、本当に驚きました。どうしてもパスキエ先生に師事して研鑽を積みたかったのですが、正直、あまり期待はしていなくて、落ちた場合のことを考えて、他の受験方法も調べていましたし、もしダメだったら、すぐに別の方法で留学準備を始めようと思っていたくらいです。だからこそ、とても嬉しいです。もちろん心配もありますが、それ以上にワクワクしています。現地の空気や言語を肌で感じたら、きっと自分の音楽も大きく変わるだろうという期待でいっぱいです。ただ、フランス語は……どうしよう(笑) 今から頑張って勉強します!

―ぜひ、留学中や留学後のお話も聞かせてください。今日はありがとうございました。

ありがとうございました。